偽文士日碌

だが、アンケートに「そんなこと言わないで」という再演希望の書込
みが多く、高平氏のところへはわが家のすぐ近くにある大ホールから
「あれと同じ舞台をやってもらったとしたら、いくらかかるか」とい
う問い合わせもあったらしいが、野際館長自身の再演希望もあったの
でこれは断ったという。つまりおれも吃驚するほどの大成功だったの
だ。最初のうち、おれ一人でホールを三日間満員にできるかという危
惧があり、わがタニマチの中村氏が助っ人に山下洋輔を引っぱり出し
てきた。結果、こんなプログラムとなった。
　第一部はおれの挨拶と「おもての行列なんじゃいな」の朗読、その
あと山下氏のソロで「トリプル・キャッツ」、おれの「昔はよかった
なあ」朗読とのデュオで山下氏がエリントンの「昔はよかったね」を
弾く。これには上山克彦がチョイ出で登場。第二部は「スーパージェ
ッター」から「ダンシング・ヴァニティ」に到るわが百五十六作品の
タイトルが現れるスクリーンを見ながらの、十分間に及ぶ山下氏の即
興演奏。最後がおれの朗読「関節話法」で、アンコールは山下氏の即
興とのデュオで「発明後のパターン」六十年代篇と現代篇の朗読。
　アンケートでは涙を出して笑いころげた、こんな朗読とは思ってい
なかったというコメントが多く、やってよかったとは思うものの、劇
場のキャパシティを気にして招待状をまったく送らなかったのが心残
りである。まだ日時場所未定の来年の再演はほんとに最後の舞台にな
りそうだから、できる限りの人をお招きすることにしよう。