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偽文士日碌


「銀齢の果て」が早くも文庫版となって出た。オビを見ると後期高齢
者うんぬんという記載がある。これを書いたのは三年前であって、そ
の時には後期高齢者なんてことばはなかったわけで、だからこれは担
当編集者の石戸谷君が、時節に便乗すると同時に作家の予言力を誇示
して書いたのであろう。小説の通り、まさに「老人は死ね」という時
代になってしまった。そういえばおれも来年は後期高齢者である。後
期高齢者というのはつまり「もうその先はない」ということである。
いやはや何という身も蓋もない命名だ。
 今日は「ビーバップ・ハイヒール」収録の日である。いつものよう
に車が迎えに来る。最初の収録の前に、たむけんが皆に「お騒がせい
たしました」と謝っているので、何かあったのかと訊ねると、彼の焼
肉店の名古屋支店で食中毒が出たのだという。「何人死んだ」と訊く
と、ひとりも死んでいないとのこと。なんじゃつまらん。それでもた
むけん、お詫びの記者会見や何やかやで大変だったらしい。停止を命
じられたり自粛したりしていた各店の営業も今日から再開され、たむ
けんはいたって元気。それでも「報知新聞」に「食チャー毒」と書か
れたことには大いに怒っていた。これは正当な怒りであろう。弱い立
場の者はいかにおちょくってもかまわないという芸能ジャーナリズム
の傲り。反省せよ。しないだろうけど。
 最初は明治期の国際結婚の話で、クーデンホーフ光子とモルガンお
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