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偽文士日碌

十二月一日(月):99-100

 ほうら見ろ。裁判員候補予定者に選ばれたということを公表するや
つが次つぎにあらわれている。家庭内や職場内で話すのはよいとされ
ているのをよいことに、SNS「mixi」の日記や自分のブログで
自分の名前を公表している者がいる。おれが危惧したのはこれだ。こ
ういう浮かれたやつが、いずれ正式に裁判員となった暁、裁判の内容
をうかうかと書くのではないかということだ。いうまでもなく守秘義
務に違反した者は有罪とされ、六か月以下の懲役、五十万円以下の罰
金である。
 一方では、辞退したいという電話もたくさんかかっているそうだ。
おれとしてはこうした人びとの方がよく理解できる。こういう人たち
にまで「国民の義務」を口実に理解や協力を得ようというのはおかし
い。国民的行事と謳うのはよいが、参加希望者に限るべきだ。おれの
場合は七十歳以上ということで辞退はできるらしいが、どうしても出
頭せよということであれば多分、行かないということになるだろう。
その場合は正当な理由なしに出頭しなかったということで、十万円以
下の過料で済むからだ。
 裁判への国民参加に対して戯曲「十二人の浮かれる男」というパロ
ディの形で疑義を表明した作家としては、裁判員への参加を断固拒否
しなければなるまい。むろん、興味がないわけではない。しかしそれ
はあくまで作家としての興味である。本音を言ってしまおう。実は参
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