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偽文士日碌

一月二十日(火) :131-132

音楽のようにストーリイを追って曲が物語っていくという形式、つま
り小説を知っている者にとって、今どのあたりをやっているかがわか
るという音楽など、前代未聞なのである。わが担当者・鈴木力が最後
には泣き出したというのも、その効果のひとつであったろう。舞台二
階席のフクロウ役のフルートがテーマをくり返し、目玉ちゃん登場の
場面ではベティ・ブープのテーマ・ソングが出てきて、サービスもな
かなかのものだ。そしていよいよコロス役のXUXUの四人が舞台二
階席に登場。「イッツ・ビーン・ア・ロング・ロング・タイム」「ミ
スター・サンドマン」「私の心はヴァイオリン」「ダンシング・アウ
ル」つまりあの「キトクロ・キトクロ」、「虎の出る村」の中国語の
テーマ、「子守歌」「廃屋のアリア」つまり家具たちのおしゃべり、
最後は「グッドナイト・スイートハート」で、フクロウが涙を一滴落
して終る。XUXUはアンコールでも上記のうちのおれの好きな四曲
を歌ってくれた。
 終演後に恒例のパーティが二階ロビーで行われ、ここでもいろんな
人たちと邂逅。来年は何をするのかと山下氏にそっと訊ねると、彼は
とんでもないことをおれの耳に囁いた。これは言えない言えない。絶
対に言えません。実現するかどうかは来年のお楽しみだ。
 今夜こそ「SMOKE」へ行って一杯飲もうと思っていたので、挨
拶を早めてもらって失礼し、駆けつけたのだが、残念、またしても閉
店後であった。
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