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偽文士日碌

一月三十日(金):137-138

いたが内視鏡のコードが足りなくなるほどの長さだとは思わなかった。
S字結腸が長いため、何度も寝返りをうたされる。
「今までは、本当に奥まで入れていたんだろうか」と、先生は首を傾
げていた。
 今回は今までになく苦しかった。いつもけろりとしているので看護
婦や先生が驚くのだが、やはりこれくらいの苦痛がないと本格的な処
置ではないような気がする。ポリープを三つ切除。あとのいくつかは
癌と関係のないポリープだという。
 二、三の注意事項を言い渡される。切除後の傷口を塞いでいるホチ
キスのような金具がはずれるといけないので刺激物、消化に悪いもの、
そして酒は一週間厳禁とのことである。今後一週間以内におれに会う
人は素面の筒井康隆が見られます。
 クリニックを出ると、そのビルの地下が神戸駅まで続く地下商店街
になっていた。雨が降っているのでこれは好都合だった。そのまま神
戸駅を抜けてニューオータニに入り、まず一階の喫茶室でカプチーノ
を飲みながらたてつづけに煙草を喫う。それから十七階の「千羽鶴」
へ行き、先付の数の子から始まって、ぐじの蕪蒸し、トロ、鮃、縞鯵
の刺身、牡蛎の玉〆、金目鯛の餅包み、河豚の唐揚げを次つぎに平ら
げる。最後は茶漬で、そのあとフルーツの盛合せで仕上げとなる。刺
激物である生姜と菜種の辛子和えは光子に食べてもらった。
 タクシーで帰宅。七時半。
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