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偽文士日碌

七月八日(水):201-202

 義母の三回忌だったので、思い立って今日はおれの実家の墓参りに
行く。
 みなとタクシーの岩井君が行ってくれることになり、二時半に家を
出発。いつも朝日放送へ通っているのと同じ阪神高速に乗る。ほとほ
と退屈する道路なのだが、今日は光子がいるので助かる。
 長堀で降りて御堂筋を南へ。三津寺筋まで来ると左側に筒井家の菩
提寺・三津寺が見えてくるが、今日は立ち寄らない。千日前を左折し
て左、千日前筋の裏側の一角が筒井家の墓のある墓地だ。墓地の角の
花屋で花を買い、墓地中央部の二基の墓を掃除し、花を供え、線香を
立てて拝む。五輪塔と筒井家累代霊位のそれぞれに向かって、おれは
光明真言(オンアボキャー……)を三度唱え、光子は長いこと来なか
った言いわけをながながと述べる。周囲にはホテルだのマンションだ
のが建っているので、直接日は当らないものの、それでも汗びっしょ
りになってしまった。筒井家の墓のふたつ隣には、あの「今ごろは半
七さん、どこらどうして」の三勝半七の墓がある。
 いつもなら心斎橋筋を歩いたりお好み焼きを食べたりするのだが、
今日はその気にならず、待っていてもらった岩井君にまた家まで送っ
てもらう。最近は「誰でもよかった」という物騒な事件が多く、どう
も人混みを歩く気にならないのだ。
 帰宅五時半。
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