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偽文士日碌

八月二十八日(金):215-216

 二時に中村満、上山克彦来宅。中村氏の長篇「紅蓮」についての感
想など話す。「紅蓮」はすぐれたピカレスク・ロマンである。経験豊
富な中村氏の半自伝的な作品で、この独自の猛烈さは類を見ない。お
勧めである。第二作の短篇集はもう原稿ができているとのことで、懇
願して早速見せてもらうことにする。
 二時半に成城ホールの野際館長と、舞台芸術の菊地廣と、ジャーマ
ネ柳井が来て、企画の中村満、演出助手で役者の上山克彦を加え、懸
案だった朗読会の第一回目の打合せとなる。昨年北沢タウンホールで
公演した「筒井康隆、筒井康隆を読む」が大好評だったための再演で
ある。あの功績が買われて野際館長は新しくできた成城ホールの館長
になってしまった。しかも北沢タウンホール館長とのかけもちだとい
うから大変だ。成城ホールのパンフレットを見せてもらったが、なか
なか瀟洒な、いい劇場である。何よりも楽屋から舞台までベタで行け
るのがよい。階段が嫌いなのだ。
 プログラムは少し変ることになった。まず第一部では、おれの「お
もての行列なんじゃいな」の代わりに、ニューヨークをはじめ海外で
公演を重ねてきた上山君が、どこでも大受けだったという「陰悩録」
を演じる。抱腹絶倒間違いなしの舞台である。そのあと山下洋輔のソ
ロがあり、前回同様おれの「昔はよかったなあ」の朗読とのデュオで
山下氏がエリントンの「昔はよかったね」を弾く。これに上山君がチ
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