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偽文士日碌

九月三日(木):223-224

 丸谷才一より来信。このあいだ「女ざかり」を番組で紹介した礼状
である。こちらからはAMAZONでその文庫本が品切れになってい
るらしいことをお伝えし、ご返事とする。あの傑作が古書でしか手に
入らないとは悲しい限りだ。
 二時に朝日新聞の大上朝美来宅。チェーホフ「結婚申込」、ズウデ
ルマン「猫橋・憂愁夫人」、クリスティ「そして誰もいなくなった」
の三本を一挙に渡す。その次のフロイド「精神分析入門」から、いよ
いよ大学時代に突入である。大学は今年一杯で卒業し、来年から乃村
工藝社に入社する予定である。今後は舞台写真やポートレートが多く
なる筈だ。
 夜、光子と近くの「重よし」へ行く。「オール讀物」の「現代語裏
辞典」連載が終了したため、吉安章編集長と担当の山田憲和が祝って
くれるのだ。吉安君と飲むのは久しぶりであり、昔話に花が咲く。い
つもながら料理は旨く、「魔王」も旨い。ご主人の佐藤さんから穴子
寿司をみやげに頂戴する。そのあとわが家まで歩き、あらためてシャ
ンパンで乾杯。さらにキャビアとワインでもてなす。おれはビールを
飲む。吉安君はしきりにおれが酒に強いと感心する。十二時まで飲む
と、さすがにご両人はふらふら。帰っていくのを心配しながら見送っ
たが、無事に帰れたのだろうな。
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