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偽文士日碌

十一月十一日(水):243-244

 大江健三郎から速達の手紙。一昨日、テレビ東京のわがコーナーで
「同時代ゲーム」をやるという連絡の手紙を出したばかりだから、そ
の返事とは思わず、何ごとかと驚く。まったくもう、人を脅かすにも
程がある。大雨の日だったから速達の赤インクが溶けて流れている。
ほんとに怖かった。
 午後五時半、角川重役の新名新がタクシーで迎えにきてくれた。今
夜は実写版「時をかける少女」の完成披露試写会である。会場は汐留
の、以前徳間が持っていた、ちょっと立派なホールだった。楽屋が畳
敷きなのも、いかにも徳間らしい。ここで主演の仲里依紗と中尾明慶
に会う。仲君はアニメ版に出演した際に会った時よりも細くなり、顎
が尖っていた。おれは肥っている彼女の方が好きだったのだが。
 舞台挨拶が始まった。おれも出てくれと懇願されていたのだが、映
画を見てもいないのに挨拶はできないといって断ったのである。かわ
りに、司会者に紹介されて席で立っただけ。
 映画はなかなかよかった。仲君がよくやっていた。シナリオの功績
も大であろう。芳山和子役は安田成美。随所に大林版「時かけ」への
オマージュがある。終了後、監督の谷口正晃や脚本の菅野友恵、その
他のスタッフ大勢と銀座の「維新號」へ移動、中華料理で歓談。来年
三月の、新宿ピカデリーでの初日の舞台挨拶を約束させられる。また
新名さんに送られて帰宅。十一時半。
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