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偽文士日碌

一月二日(土):263-264

しいことはないのかなあ? それならツマラン!」という一節が重な
った。「お父さんは笑うておられた、あれは辞典に出ておらぬことを
自分が書くつもりでおるのか知らん、と」
 これはまさにセレンディピティである。以前からおれも考えていた
ことだったのだ。しかし辞典に出ていない文字や言語を創造し駆使し
て作品にできるものかどうかを考えたことはなかったのだ。そこで、
ちょっと本気で考えることにした。だが、新しく作った言語で小説を
書くには何らかの必要条件や整合性が必要である。例えば味覚を表現
する言語というのは極めて少ない。それを利用して、などと考えるう
ち、次第に妄想が一定の形態をとりはじめたので、しめしめと思う。
ただし数年がかりのどえらい作業になりそうである。とにかく最初の
うちは現在存在する、または過去に存在して現在は使われていない難
解な漢字を多用し、その文字そのものの持つ身体性を強調し、徐徐に
新らしい漢字へ移行していかなければなるまい。
 中村満から急かされている、今年の朗読会の招待者名簿を作成し、
挨拶状を書く。呼びたい人すべてを招待するとホールがパンクするの
で、二百名にとどめようとするが、どうしても二百二十人になってし
まう。来られないという人はほとんど考えにくいので、全部来たとす
ると一回の公演に七十名余ということになり、これに同伴者を含める
と一般の人が入れなくなってしまう。ええい、追加公演覚悟で全部に
送ってしまえ。
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