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偽文士日碌

二月十三日(土):273-274

 作家が小説を書かないでどうする。そんな内心の声に急かされて、
長篇を書きはじめる。何だか今までのここへの書き込みから、みんな
新らしい言語や珍しい漢字などを鏤めた小説だと勘違いしているよう
で、この間も朝日ネットのわが担当・森田真基が、彼の作った、画面
に表示することのできる難しい漢字のリストを持ってきてくれた。し
かしやろうとしているのは必ずしもそうではない。新らしい表現のた
めに、主として今まで使わなかった単語を使おうとしているだけだ。
朝日新聞の連載のために昔の本を読み返していると、ああ、こんな言
葉も知っていたのだ、これもだと思うのだが、ではなぜ今までそれを
使わなかったのかというと、知的レベルの低い読者への配慮であった
としか言いようがない。それは無意味ではないのか。
 鼻孔の奥の瘡蓋もとれ、やれやれだ。あとは朗読会までこの体調を
維持しなければならないが、自主トレをやろうとしても、今日は疲れ
ているからなどと、結局は一日のばしにしている。
 今日はその朗読会で販売する書籍の册数や、レート換算するための
国籍を調べに平石滋、尾川健両君が来宅。二人は本を扱っている時、
実に愉しそうだ。平石君は今までのわが書籍、小説、エッセイなどの
膨大なリストを作ってきてくれた。尾川君はおれが中学生時代に描い
た少年向け科学雑誌の連載漫画をコピーしてきてくれた。両君には感
謝感謝。光子は両君にチョコレートを贈る。
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