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偽文士日碌

三月十八日(木):285-286

 あまりの多忙さに、かえってぼんやりしている時間が増えた。契約
書を書かずにほったらかしにしていて、中には契約書より前に出版さ
れてしまった本もある。署名落款を頼まれた本がダンボール箱三つに
入ったままだ。童話やジュヴナイルが一度に六冊も出たためである。
「百人の日本人」の「これを読め」で紹介すべき本を物色している暇
がなく、休ませてもらうことにする。朝日の連載は、やっとつげ義春
「ねじ式」とビアス「アウル・クリーク橋の一事件」を脱稿、データ
送稿する。「アホの壁」は六刷九万五千部。十万部を越すと革装本が
貰えるが、これは久しぶりのことだ。「虚航船団」以来のことになる
のではないか。
 ぼつぼつ書き溜めていた長篇は、推敲する根気がなくなり、最初の
五十枚ほどを決定稿として保存した。タイトルを「聖痕」とする。光
子は読みたがっているが、まだ誰にも見せない。
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