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偽文士日碌

六月十八日(金) :319-320

は常に「室戸岬南方海上」という言葉が聞かれるように、このあたり
の家家、常に颱風に脅かされてきたのであったろうし、わが誕生日を
見舞った昭和九年の室戸颱風はまさにここを通過したのである。若き
弘法大師が修業したと言われる洞窟がふたつ並んでいたので、入って
みる。ここで聞える波の音は日本の音風景百選に入っている。
 中岡慎太郎の銅像が立つ岬の突端をまわり、高知市へ。懐かしや路
面を走る市電の姿。ホテル日航旭ロイヤルに着く。室戸岬をまわって
きたと言うとホテルマンは驚いていた。九時間もかけて車でそんなこ
とをする人は滅多にいないのだとか。
 夕食ははりまや橋の近くにある「司」という料理屋へ行く。皿鉢料
理の店である。おれは芋焼酎、光子は日本酒、新さんはビールを飲む。
鰹のたたき、扇のように拡がったうちわ海老、鯨の舌つまりサエズリ
の酢味噌、ウツボの刺身、鯖鮨、チャンバラ貝、どろめという釜揚げ
シラスの酢味噌など、珍味を頂戴する。
 食後はアーケード商店街を散策し、ひろめ市場の中を見る。周囲の
店で作っているものを中央の広場で食べるという珍しいフードコート
形式の市場だ。東南アジアのどこかに来ているような熱気がある。
 ホテルに戻り、またしてもおれの部屋にみんな集って、ビール、ワ
イン、日本酒などを飲み、話す。ただひとつしかない喫煙ルームだそ
うだが、いちばんいい部屋だそうであり、二十一階なので眺めもなか
なかよろしい。就寝十一時。
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