トップへ戻る

偽文士日碌

七月五日(月):329-330

 二千五百枚を越す大作「荒涼館」をやっと再読し終え、「漂流」の
原稿にし、ついでに、これは最近再読して内容を熟知している丸谷才
一「女ざかり」も原稿にし、写真と共にレターパックで送る。郵便局
へ行き、ゆうパックがひどく遅れているらしいが、これは大丈夫です
かと訊ねると、女性局員同士で何やら相談した末、これは大丈夫です
と言うから、やや心許ないながらも託す。
 午後、新潮社の石戸谷君とコンテンツ事業部の加藤氏が、某映画会
社の人をつれてくる。わが長篇「銀齢の果て」映画化の話である。ま
だ詳細まで公に発表できないのは残念だが、配役の事についての相談
は実に愉しかった。わが危惧するところといえば老優の誰かが撮影中
に死ぬという事態である。主演者を除けばみな楽なスケジュールだか
ら、そのような心配はないでしょうと映画会社の人。そう願いたいも
のである。
 中央公論新社から谷崎賞候補の四作品がどかっと送られてきた。候
補作品は発表しないことになっているので、残念ながらこの作品名と
作者名も書けない。それにしても、一冊などはなんと七百頁にもなる
大冊である。読みはじめるにはやはり覚悟が必要であろう。
 夜は久しぶりに「重よし」へ行く。ご主人佐藤さんと波多野承五郎
やその孫の犬養智子女史や、プリア・サヴァランの話などをする。
ページ番号: 329 330

「次のページへ」や、「前のページへ」をクリックすると、ページがめくれます。