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偽文士日碌

七月六日(火):333-334

えたというから、青年が戻って来て、待ち伏せしていた警官に保護さ
れたのかもしれない。おかげで四時ごろまで眠れず、眠りも浅くて変
な夢ばかり見続けた。
 神戸の家にはおかしな女性が訪ねてきたことは何度もあったが、原
宿では初めてである。男性も初めてだ。神戸にやってきた女性につい
ては以前の日記にも書いている。わたしはあなたの妻であり、女の子
もひとりいるから認知してほしいと主張する、山形から来た、のちフ
ァンたちが「水撒き女」と名付けた女性だとか、「わたし七瀬です」
と言ってやってきて、警官相手に暴れまわった女性などである。 
 午後、朝日ネットの大野君と市川さんがお中元を持って来訪。とら
やの羊羹セットと、山本社長からはMACALLANの二十五年物を
頂戴する。
 大江健三郎からはがきが届いたので、さっそく返事を書いて出す。
「荒涼館」を読み続けていたので、以前のはがきに対してもながいこ
と返事を書いていなかったのだ。
 光子は友人と待ち合わせている伸輔の画廊へ出かける。夜は夫婦で
近くのイタリア料理「フィオーレ」に行く。少し遅れて伸輔もやって
くる。牛肉の炭火焼が絶品。
 伸輔は逗子へ帰り、光子は就寝。おれはひとり、今度の「銀齢の果
て」を映画化してくれる監督の候補のひとりの最近作をDVDで観賞
する。いささか荒っぽく、老人たちの心理をうまく表現してくれるか
どうか疑問。
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