トップへ戻る

偽文士日碌

九月二日(木):363-364

 五時半過ぎに朝日新聞・大上朝美がハイヤーで迎えに来る。今日は
光子ともどものお招ばれで、「漂流」連載の打上げだ。以前から築地
へ行ってみたいと洩らしていたため、市場とは少し離れているものの
築地・本願寺裏の「ふじ木」という、小さいが新しく綺麗な料理屋へ
連れて行かれる。店には文化グループ編集長・佐久間文子とその上司
の福地献一が待っている。福地氏とは初対面である。さっそく乾杯。
おれはのっけから焼酎、光子はスプマンテのあと白ワイン、他の人は
ビールのあと白ワインや焼酎や、その他いろいろ。
 蛸の卵などの先附八寸のあと、スッポン仕立ての土瓶蒸し。その次
の刺身はさすがに旨かった。活車海老、中トロ、真鯛、鮃その他だが
いずれも新鮮。この店を選んでくれたのは朝日の料理や料理店担当の
女性だと言う。次いで帆立のしんじょう焼、煮物は冬瓜のスッポン煮
や小芋などにフカヒレのあんかけ、揚物は鱧のアスパラ巻と銀杏、酢
の物は鰈の南蛮漬に蕎麦の芽、ご飯は蟹の粽、デザートは紫芋の葛饅
頭という、いやはや風流で夏向きのけしからぬご馳走であった。
 女性が三人いるだけに話は大いに盛りあがり、料理のこと、JAX
Aのこと、ペンクラブのこと、大江健三郎のこと、ファッションのこ
と、まるでシュンポシオンのようであり、時間の経つのを忘れ、なん
と四時間半も話し続けてしまった。全員が食べ終えてから次の料理を
出すという店の手順だったからであろう。帰宅十一時。
ページ番号: 363 364

「次のページへ」や、「前のページへ」をクリックすると、ページがめくれます。