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偽文士日碌

十月十二日(火):379-380

 山田風太郎文学賞の候補作品はいずれも長大で読むのに難渋。貴志
祐介「悪の教典」などは四百頁を越す大冊が上下二巻であり、綾辻行
人「Another」も七百頁に近い大作なのである。
「美しい人だわ」と妻が言った。やってきた「群像」編集部の須田美
音は東大英文科出身の才媛で入社三年目。今までおれが「群像」に一
度も書いていないことも初めて知ったと言い、しきりに不思議がる。
おれも不思議である。おれの小説も「ダンシング・ヴァニティ」以外
はほとんど読んでいず、何も知らずにおれにメールしたことを自分で
も向こう見ずだと言う。
 小説の依頼なのだが、今書いている「最後の小説」は「新潮」の矢
野優も見せてほしいと言っていたので、不公平になるからできている
部分を彼女に見せることはなかったが、一応こちらの条件だけを述べ
て編集部内での相談の結果待ちということにする。現在執筆を中断し
ている理由は、どうしても取材が必要になってきたためなのだが、ど
こかに取材の手配を頼めば結局そこへ原稿を渡さねばならなくなるか
ら困っているのである。他にも条件はあり、これはまだ矢野君にも話
していないのでいずれ逢った時に話すつもりでいる。取材に出かける
のはまだ一か月ほど先になるから、どこに書くかはそれまでに決めな
ければならない。もし他にも名乗りをあげる誌紙があれば今のうちに
どうぞ。
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