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偽文士日碌

三月三日(木):445-446

「枕詞逆引き辞典」が、たった一か月で仕上ってしまった。さてこれ 
をどうすべきか。原稿用紙にしてたった五十七枚では本にならぬ。で
きるだけ多くの人に利用してもらいたいと思うが、どうすれば宣伝で
きるのだろう。世話になっている朝日ネットに提供し、「笑犬楼大通
り」のメニューのひとつとして、広告代を稼いでもらおうか。現在思
案投首のさなかである。
 ひと仕事終ったので骨休めに、光子を伴いオリエンタルホテルへ。
タクシーに乗っていると霰がぱらつき出し、ホテルに荷物を置いてか
ら大丸まで歩いていく途中では少し雪が降る。ゼニアへ行き、ワイシ
ャツのボタンが分厚く、ボタンホールが小さいことの文句を言い、カ
フスボタンを買う。光子は落したイヤリングを買ったのと同じ店でま
たイヤリングを買う。
 ホテルに戻り、眺めのいいバーで食前酒を一杯やってから隣室の鉄
鈑焼に行く。ここのカウンターのうしろの窓も実によい眺めである。
帆立貝柱、野菜、飛騨牛のヒレなどを焼いてもらう。おれはバーボン
のソーダ割り、光子はフランスワイン。
 部屋でマッサージにかかる。光子はいつもの女性だったが、おれは
初老の男性で、どうもこの男性マッサージ師というものはいい人にか
かったことが一度もない。手抜きもいいところで、「もっと強く」と
言われぬために時どき無闇に力を入れる。気分が悪くなった。
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