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偽文士日碌

三月十三日(日):453-454

 あれから二日、ひどい状況がますますはっきりしてきた。朝日新聞
が「あなたは神戸で震災に遭われているので、被災地の方に何か教え
てあげてください」とコメントを求めてきたものの、「規模がまった
く違う。おれなどの体験はしれているのだから、そんな偉そうなこと
はとても言えるものではない」と言って断る。
 被災地のあちこちには過去、旅行したところが多い。「親切にして
くれたあの人たちはどうなったかしら」と光子は気を揉んでいる。こ
の日碌を読んだ知人たちからも見舞のメールが届く。新宿の本社ビル
にいたという弟の之隆からも電話があり、地震初体験だけに、いかに
怖かったかを訴える。足が震えて階段が降りられず、大通り中央の安
全地帯にずっと立っていたとのこと。近所のスーパーへ行くとおかみ
さんが、怖くて家におれず、犬を抱いてずっと道路にいたとのこと。
都内も相当ひどく揺れたらしい。
 紀ノ国屋へ買物に行った光子によると、食料は買い占められ、あま
り残っていなかったらしい。おれは近くのスーパーへ行き、いつも通
りの食品を買うことができたのだが、ここもやがて何もかも売り切れ
るのだろうか。
 一昨日、東京駅では気の毒な外人観光客を多く見かけた。ただでさ
え不案内なところへこの騒ぎ。どうしていいやらわからず、夫婦が眼
を丸くして歩きまわっていた。
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