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偽文士日碌

八月三十一日(水):493-494

 煙草をやめようとして禁煙補助薬を服んだやつが六人も意識障害を
起した。うち三人は運転中だったから発見されたのだが、発見されな
かったやつはまだまだたくさんいるだろう。ただでさえ禁煙は精神的
にも肉体的にも不健康きわまりないというのに、馬鹿な連中がいるも
のである。
午後四時半、ハイヤーが迎えにきて東京会館へ。谷崎賞の選考会で
ある。他の委員たちとお久しぶりの挨拶。山田風太郎賞で一緒の桐野
夏生を除いて、皆ほぼ一年ぶりだ。今回から司会は関雑誌編集局長で
ある。選考が始まると、おれも一押しだった稲葉真弓の「半島へ」が
ほぼ満票でトップになる。あと一作、川上弘美がいつになく熱心に推
して、これを断固拒否の池澤夏樹と議論になり、二作受賞にするかど
うかも含めて全員が議論に加わり紛糾。関さんの好裁量でどうにか一
作受賞に落ちつく。「こんなに強硬に推したのは初めて」と言う川上
弘美。いつもより時間は一時間ほど長くかかって、終ったのは七時半
だった。稲葉さんは大喜びで賞を受けてくれたらしい。授賞式の挨拶
はおれに決る。
 食事となると、今までの緊張した雰囲気は跡形もなく、弘美ちゃん
もさっぱりした様子で談笑。皆はワインだが、おれだけはウイスキー
を飲む。さすがに高度なギャグ、ユーモアの頻発で笑いが絶えず、終
宴九時半。帰宅十時過ぎ。
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