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偽文士日碌

十二月一日(木):521-522

「不在」を書きあげる。やはり六十一枚になる。読み返したのだが、
たったこれだけの枚数なのに「第一部 欠落」「第二部 虚体」「第
三部 残影」「第四部 失踪」「第五部 消滅」などとするのはいか
にもものものしいので、単に「1」「2」「3」「4」「5」とする
ことにした。例によってしばらく寝かせておくことになる。
 マドリッドの文化インスティテュートからJFCを介して招待され
た。来年三月のイベントで、ジャパニーズ・フィクションをテーマに
し、歴史学者で日本文学が専門のカルロス・マルティネス・ショウ教
授が行うセッションで、小生の対談が企画されたのだ。
 こんな招待があるというのも、小生の作品がスペイン語圏で広く読
まれ、高く評価されているらしいからであろうと思い、実にありがた
いことだと思う。ビジネスクラスでの往復航空券や、マドリッドの四
つ星ホテルの三泊や、空港ホテル間の車の送迎や、日本語スペイン語
の通訳や、参加費千五百ユーロなどが提供される。
 スペインはまだ行っていないが、残念ながら断念せざるを得ない。
老齢であること、機内で煙草が喫えないこと、同じく機内で激しく耳
が痛むこと、等がその主な理由である。JFC吉田ゆりかにそのこと
を伝え、丁重にお断り申しあげるよう頼む。
 やれやれ。歳をとるのは悲しい。新しい体験するのが苦痛になって
くるからだ。
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