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偽文士日碌

二月十一日(土):539-540

「新潮」に掲載された「不在」が評判になっているらしい。書いてい
て手応えはあったものの、なんであんな着想が出てきたのか、なんで
あんな構成にしたのか、さっぱり思い出せない。おお神様。いったい
なんであんな傑作が書けたのでしょう。なあんて。
 大健裕介が来宅。マネージメント以外の原作著作権などに関しては
以後、以前からのわが信頼によって大健君が窓口になるらしい。彼は
「家族八景」の契約書を持ってきた。少しごたごたがあったものの、
これにて契約締結である。やれやれだ。これというのも、最初オリジ
ナル脚本となる第七話の「知と欲」なる話がどうにもひどい出来だっ
たものだから、書き直しを頼んだところ、すでに撮影は終了している
というので臍を曲げ、では契約書に署名しないと言ったのが始まりだ
った。何しろ七瀬のお手伝いに行った先が作家の家で、この作家先生
がぼろくそに書かれていた。「犬をけしかける少女」というのを書い
て没になるなど、ひどいものだ。「先生のことではありません」と抗
弁してきたものの、作家の権威を守るのは長老の義務である。撮り直
しと決ったものの、どうしていいかわからなくなったらしいので「作
家」を「脚本家」にすればいいと入れ知恵して、それなら音声だけの
問題だからあっちは大喜び。丸くおさまった。
 大健君は「家族八景」の第三話と第四話の完パケを持ってきてくれ
たので、夜、食事しながら見る。どちらも上出来だ。
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