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偽文士日碌

二月十四日(火):541-542

「文藝春秋」本誌の平成女優の順位を決めるというアンケートに、答
えないことにした。詳しいだろうからというので丁寧に手紙をくれて
のアンケートだが、一位、二位、三位を書かなければならないので、
これは今まで何度も共演した女優、同じホリプロの女優、誰を除外し
てもまずいのだ。ご賢察くださいと丁重にお断り申しあげる。
 光子と六時前に家を出て表参道を歩き、青山通りのビル七階「カッ
パス」へ行く。ビルの前で矢野、楠瀬、鈴木三氏が待っていた。店は
狭いが眺望は最高。オーナー・シェフは以前「フィオーレ」にいたと
やらで、おれのことを知っていた。おれはバーボンのハイボール、諸
氏と光子はワイン。鯛のカルパッチョ、白子のフリット、牡蠣のリゾ
ット、蝦夷鹿のパスタ、豚肉のステーキ。いずれも美味。今夜は長年
のわが担当であった鈴木氏が定年退職なのでその送別会なのである。
名残りを惜しみ、いろいろ話す。食後はわが家まで歩き、ドンぺリで
また乾杯。鈴木氏は神楽坂でシールドと各種チーズを買って来てくれ
た。二十五年もののマッカランやワイン、ビール。生ソーセージ、蒸
し鮑などでもてなす。小説のことを話しているうち「メタノワール」
に話が及び、ついに矢野君に原稿を渡す。三氏は交替で別間へ行って
原稿を読み、大いに喜んでくれる。たしかにこれはおれにしか書けな
いものであることは事実。気がつけばテレビの「家族八景」が終って
いて、なんと一時半。三氏はお帰り。就寝二時。
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