トップへ戻る

偽文士日碌

三月二日(金):545-546

 留守中セコムが保管してくれていた郵便物を整理していると、河野
典生夫人から訃報が届いていたので驚く。平成二十一年の一月に脳出
血を起し、重度の嚥下障害になっていたという。一月二十九日他界。
葬儀は親族だけで行ったらしいが、あわてて次のような手紙を書く。
「畏友、河野典生の死を心より悼みます。蜜月状態にあった交友時期
のことは今でもよく思い出し、現在に到るまで親友であったと思って
おります。あれほど何でも打ち明けあい、親しかった作家の友人は他
におりませんでした。お子たちに尊敬され、奥様に愛されて、彼は幸
せだったと思います。お手紙によって彼が安らかに臨終を迎えたらし

いことを知り、心が和みました。同封した小額の御香典、何卒御仏前
にお供え下さいます様。御親族のご健康をお祈りします」享年はおれ
と同じ七十七歳。
「虚構への昇華について」が掲載された文藝春秋の臨時増刊号「三・
一一から一年 一〇〇人の作家の言葉」が送られてきた。玄侑宗久の
「光の山」という短篇が載っていて、これは案外面白かった。価値の
大逆転。
「悲劇喜劇」野田秀樹特集の原稿依頼に承諾の返事を出す。
 午後二時、角川書店重役の新名新が来宅。契約書類、「野性時代」
の原稿依頼、角川から出すSF作家クラブ五十周年記念アンソロジー
の原稿依頼。新名君は今の出版界を知る貴重な情報源である。
ページ番号: 545 546

「次のページへ」や、「前のページへ」をクリックすると、ページがめくれます。