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偽文士日碌

六月七日(木):565-566

 レイ・ブラッドベリ死去。われわれSF第一世代にとっては叙情的
なSFの指針となってくれた作家だ。九十一歳だから、なんとおれと
は十四歳しか違わない。もっと年上のように思っていたのだが。
 本谷有希子の短篇集はタイトルが「嵐のピクニック」と改められた
らしい。この方がずっといい。中味の短篇もふたつ、タイトルが変更
された。書評は「ポストモダンの掌篇集」と題して「群像」に送る。
本谷有希子とはホリプロを通じて、朗読会で共演する話があったのだ
が、老齢を理由にお断りした。すでに「最後の舞台」を宣言してしま
っているからでもある。本谷さんの舞台は評判がよく、いつも満杯だ
というので、いささか心残りではあったのだが。
「群像」に載った「大盗庶幾」を「文學界」の田中光子編集長が長文
のメールで褒めてくれた。「多くの人が愛読してきた二十面相の物語
にしっくりと接ぎ木される作品が、ひとりで、ここにある、という印
象なのです。それが講談社の『群像』に掲載されたことも、すばらし
いことだと思いました」
 そして「文學界」はわが「役割演技」を八月号に掲載してくれるこ
ととなった。これに対しても田中編集長は「現代日本の状況を踏まえ
た豪奢なブラックコメディ」という評価をしてくれた。
 大いに意を強くして短篇「リア王」を書きはじめる。こんな老文士
にして褒められることはやはり創作意欲を高めるのだなあと嗤う。
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