トップへ戻る

偽文士日碌

七月十二日(木):571-572

 いよいよ明日から新聞連載が始まるのだが、連載終了までは病気も
できず怪我もできず、死ぬこともできないという気分が高まってきた
のが不思議だ。二十年前の「朝のガスパール」の連載時には、そんな
気分とはまったく無縁であり、考えたことすらなかったのだが、これ
はやはり歳をとったせいなのだろうか。東京と神戸を往復するたび、
今回も無事に神戸に帰ってきた、今度も無事東京についたと、いちい
ちほっとしているし、昨日のビーバップ収録にも、ハイヤーに乗れば
シートベルトを忘れず、運転手にはお中元のぽち袋を渡し、礼を言わ
れれば「命を預けているのだから当然」と言ったりする。おれもずい

ぶん変ったものだ。これは歳をとって残り少ない命が惜しくなってき
たのではあるまい。何よりも恐れるのはたくさんの人に迷惑をかける
ことである。綺麗ごとではない。老年になれば病気、怪我、死亡の確
率は高まるのだから、心配してあたり前だ。
 毎日のようにFAXがどーんと届き、疑問のメールが来る。オリン
ピックが始まると紙面の構成を担当する人が多忙になるとやらで、そ
れまでに蓄積が必要なのだそうだ。さらにオリンピックが始まると、
そちらにカラーの紙面を取られるので、毎回すべてカラーで描いてい
る伸輔の絵がモノクロになってしまう。デジタル朝日というものに入
ると、すべてカラーで見られるそうなのだが、自分の小説の載った紙
面を有料で見るというのもおかしなものだ。明日の初回はカラーか?
ページ番号: 571 572

「次のページへ」や、「前のページへ」をクリックすると、ページがめくれます。