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偽文士日碌

八月二十八日(火):577-578

「ビアンカ・オーバースタディ」が品切れになり、アマゾンで本全体
の七位だったのが、たちまち二百位以上も下がってしまった。重版が
できるのは来月三日ごろだそうである。太田が悪い。
 谷崎賞選考会の迎えのハイヤーでパレスホテル東京へ。新装なった
ばかりだが、十九階のミーティング・ルームに入る直前、全館禁煙と
聞かされて愕然とする。禁煙の会合には出ないという宣言をしていた
のだったが、迂闊にも念を押さなかったのだ。来年も同じ場所でやる
のなら辞退することにしよう。
 受賞したのは高橋源一郎「さよならクリストファー・ロビン」だ
った。第一回三島賞の時に「優雅で感傷的な日本野球」に賞を与えて
から二十四年、彼には二回賞を与えたことになる。 
 そのあと六階のレストランで夕食。ここは喫煙可だった。他の選考
委員たちはみな「聖痕」を読んでくれている。桐野夏生は「最初にあ
れを読みます」と言ってくれたが、嘘やお愛想のない彼女のことだか
ら本当なのであろう。和歌をやっている川上弘美とも枕詞について話
す。案外多くの読者がいるのでありがたい。大江健三郎からも大上朝
美を通しての伝言で「毎朝衿を正して読んでいる」とのことだし、他
からも「これ以上貴夫君をいやな眼に遭わさないで」「毎日はらはら
して読んでいる」などの声がある。大上さん自身も「貴夫が可哀想で
しかたがない」と言っている。長丁場、まだ始まったばかりである。
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