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偽文士日碌

八月二十九日(水):579-580

「ビアンカ」の三刷りが決定した。ちびちび小出しに重版かけるから
品切れが出たり、先に注文していた人が入手できなかったりするので
ある。太田が悪い。
 大上朝美が朝刊のポップ欄で「ビアンカ」を取り上げてくれるらし
い。九月の初めごろになると言う。読んだ人が買おうとしても、二刷
りがなくなっている頃じゃないかと思い、心配である。太田が悪い。
 文藝春秋の連中とリストランテ・フィオーレで会食。だいぶ以前に
予約しておいたのだが、喫煙のできる奥の部屋はすでに予約済みだっ
た。こんなに早く予約した人物は何者か、などと思っていたのだが、
われわれ六人が席について間もなく、何やら重要人物めかした老人と
その家族や取巻きらしき連中が奥の部屋に入って行った。
 煙草が喫えないので二度ばかりテラスへ出る。デザートと珈琲が終
り、勘定し、外へ出ると例の大物めいた人物をオーナーが紹介してく
れた。なんと元NHK会長の海老沢勝二ではないか。ひやーエビジョ
ンイルだと思いながら自己紹介したら、おれのことを知っていて、嘘
かお愛想か「聖痕」も読んでいるとのことであった。
 そのあと「文學界」編集長田中光子、大嶋由美子、丹羽健介、出版
部長吉安章といういつものメンバーをわが家に招き、ブランデーやワ
インでもてなす。おれは焼酎を飲み、一時半にお開き。乞われて「リ
ア王」を渡す。あまりいい出来ではないのだが。
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