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偽文士日碌

十一月六日(火):589-590

 昨日、柚木麻子「私にふさわしいホテル」という小説を読んで大笑
いしたばかりだったので、今日の午後、迎えの車で久しぶりに山の上
ホテルへやってくると、何だか懐かしくもあり、おかしくもある。小
説は、小説家ごっこがしたくてたまらない新人の女性がこのホテルへ
やってきて珍騒動を起すというものであった。
「通販生活」の長洲君が部屋に案内してくれる。ホテルの従業員はも
はや知らぬ顔ばかりだが、皆おれのことを知っているような様子でも
ある。言われていた通り和服で来たから、確かに作家以外の何者でも
ないのだろう。まずベッドルームへ案内され、ここでメディカル枕を
抱いている写真を撮られる。実はこのメディカル枕、「通販生活」で
求めてから、寝心地がいいので家族用に九十五年にも求めたのであっ
たが、この年からなんと十九年連続で売上一位が続いているらしく、
その記念にと再登場を求められたのである。この雑誌とは断筆宣言を
した時には表紙やテレビに登場させられて、それ以来のつきあいだ。
写真撮影後隣室で、写真を撮られ続けながらのインタヴューとなり、
これは来年一月発売の春号に掲載される。
 途中ホテルの女性従業員が珈琲を運んできて、また笑ってしまう。
小説では新人女性が従業員に化けて老大家の部屋を訪れるという展開
なのだった。
 また車で送ってもらい、帰宅四時。
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