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偽文士日碌

十一月八日(木):591-592

 昨夜は伸輔と二人、朝日の文化グループから渋谷の神泉にあるダム
ジャンヌというフランス田舎料理の店に招かれて夕食会。大上朝美の
ほか美しい中村真理子と山田優、少し遅れて吉村千彰という、女性ば
かり四人と語る。鴨のテリーヌ、フォアグラその他肉料理など。伸輔
もよく喋っていた。おれは蕎麦粉のウイスキーという珍しいものをロ
ックで何杯も飲む。他の人たちはワインだったのだが、最後、強い食
後酒の珍しいものをそれぞれが取り、女性たちが持て余したものを伸
輔がすべて飲んだため酔ってしまって、十時半、家に帰着するなり寝
てしまった。そして今朝は朝食を食べてからまた寝て、一時半に起き
てきた。最近過労だったのでよほど疲れていたらしい。よい骨休めに
なったようだ。
 大江健三郎からはがき。「お返事いただかぬよう、やはり葉書にし
ます」と書いてあったのだが、やはり返事を書いてしまう。ルイズ・
ブルックスの珍しいヌード写真と、ロムニー描くハミルトン夫人の絵
を佐知子のモデルとして、どちらもコピーしたものを同封する。大江
さんは「丸谷さんの『市民小説』の、市民としての人格の達成が貴夫
にもあらわれてきている」「小説世界にかつてなかった重荷を負う貴
夫の社会性を味覚がしっかり支えるという人物創造」と書いていたか
らちょっと困ってしまい、中国の宦官の権力欲みたいな反社会性を、
いずれは貴夫も持たざるを得ないだろうと書いておく。
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