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偽文士日碌

十一月九日(金):593-594

 一時、共同通信の瀬木広哉が女性カメラマンの小堀美津子を伴って
来宅。小堀さんは女性の癖に大量の撮影機材をひとりで担いできた。
通常、男性カメラマンとてこれほどの機材は持ってこないし、持って
きたとすればたいてい助手をつれている。 
 新潮社・楠瀬君を通じての取材依頼である。月に一本、全国の地方
新聞に配信している「遠望」というコラムで、自身の転換点となった
作品を振り返るというもの。瀬木君は好感の持てる青年であり、小堀
さんもなかなかいいキャラだ。すべての作品にわたり同じようなもの
は書かないというコンセプトではあるが、自ずからわが作品の流れは
いくつかあり、そのひとつがジュヴナイル「時かけ」からラノベ「ビ
アンカ」への流れとなった、他には「神が死んで以後重要性を増した
『俗』というものを追究する『俗物図鑑』から、聖と俗の関係を考え
ようとする最近の新聞連載『聖痕』への流れなどがある」といったよ
うなことを話す。
「群像」の「創作の極意と掟」第一回のゲラを校正する。「序言」か
ら「凄味」「色気」「揺蕩」まで三十枚以上あり、この連載が毎月の
作業になり、「文學界」には同じ新年号に「リア王」が載るからその
校正もある。「聖痕」の方は新聞社や印刷所の正月休みがあるため早
いめにまとめて渡さなければならない。その他インタヴューの校正な
ど、暮になってなんでこんなに仕事が重なったのか。
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