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偽文士日碌


 渡辺淳一の地方紙連載小説が突然、何の断りもなく打切られたとい
う記事を読んで愕然。同じ新聞連載をやっている身としては平静でい
られない。ある日突然連載中の小説の末尾に「終わり」と記されるな
ど、まさに悪夢である。それにしてもこの地方紙、あまりに過激だっ
たからという言い訳くらいでは、もし提訴されたら確実に敗訴するよ
うなことをなんでやったのだろう。
 午後二時、新潮社の楠瀬君が装幀部の黒田氏と共にやってくる。何
日か前、「聖痕」の組見本を五、六通り送ってくれていたのだが、ど
れもこれも魅力的で迷っていたのである。「文学部唯野教授」みたい
にA五判にして、下部に注釈を入れるという案は魅力的だし、表紙の
絵も大きくなって伸輔が喜ぶだろうと思ったのだが、前半の注釈の少
ない部分の空白が勿体ないし、注釈が増えてくるとページをはみ出し
て次ページに追い込むこととなり、定価も数百円あがってしまう。こ
こは経済的の寸法で四六判にして、注釈は見開き左端に三段組で入れ
ることと決める。伸輔の絵は表紙と扉の二か所。決定稿は以前渡した
データに判読不能の箇所があるということで、改めて今まで掲載した
決定稿をCD二枚にして渡す。今度はうまく入っているといいが。心
配だ。五月末の出版ということも決定した。
 夕食時、屋根から落ちる雪の音に驚く。隣の手拭屋の外階段へ落ち
たので、光子が掃除しに行って手拭を一枚貰ってきた。
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