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偽文士日碌

三月十三日(水):639-640

 あれから上山、中村、高平各氏より電話があり、山下君自身からも
電話。あの次の日、一日ホテルで死んでいたのち、平常に戻ったとの
こと。やれやれだ。メールで自愛を求める。お世辞だろうが、高平氏
はおれのスピーチがいちばんよかったと褒めてくれる。
 山口昌男死去。山下洋輔のピアノと彼のフルートとおれのクラで合
奏したこともあった。すばらしい人だったなあ。納谷悟朗死去。白石
奈緒美との共演でおれの「風」を演じてくれた。名演技だった。知っ
ている人がどんどん死んでいく。もうこれ以上死なないでほしい。
「新潮」の矢野君から頼まれていた原稿、〈小説家の「幸福」〉とい
うものを五枚書き、発送する。「幸福」を括弧でくくることによって
内容の自由度を高めたいとのこと。これは「新潮」一三〇〇号(五月
号)の随筆特集に載る。変なことを書かせるもんだ。
 角川書店の郡司珠子が大部のゲラを持って来宅。「偽文士日碌」の
校正を行う。二時間もかかってしまった。どうやって調べたんだろう
と思うような疑問点がいっぱいだったのだ。郡司さんは「野性時代」
からの依頼状も持ってきた。七月十二日発売の八月号でおれの特集を
やりたいと言うのだ。SF作家クラブ五十周年記念ということなのだ
が、今やSF作家クラブでおれが知っている人は数えるほど。寄稿者
がいるのか。短篇を書かねばならず、ロング・インタヴューにも答え
なければならぬ。締切は六月。それでもなんだか慌ただしい。
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