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偽文士日碌

三月二十八日(木):641-642

「聖痕」の連載が終了したので、今夜は打上げの会食である。担当の
大上朝美が朝日お抱えの豪勢なハイヤーで午後六時四十分、おれと伸
輔を迎えに来てくれた。定年退職をもうすぐ迎えるため、有給休暇を
まとめて取ったという大上さんにどこへ行ってきたのかと聞くと「ま
ああちこち」と言うだけで教えてくれない。彼女はシニア・スタッフ
として社には今まで通り出勤するらしいので安心である。
 レストランはすぐ近く、骨董通りをちょっと入ったところにあるフ
ランス料理店レ・クリスタリーヌである。支配人ジャン・リュック・
ボーエが出迎え、自身給仕までやってくれた。七時になり、文化担当
部長の雑崎徹と文化グループ次長の野波健祐がやってきて、まずはシ
ャンパンで無事の完結を祝う。そのあと、おれのみハイボールで、あ
とは全員お任せのワイン。最初がカニのババロアだったが、これは伸
輔のみカニ・アレルギーなのでトリュフに変えてもらい、これが絶品
だったとのこと。むろんカニも旨かった。次いでカリフラワーのポタ
ージュ。ボーエ氏は日本語が不得意なので、おれはこれを「カニフラ
ワー」と聞き違えてぎょっとした。ラタトゥイユのピュレとミントオ
イルを添えたスズキのソテーを挟んで、メインが四種類、おれは牡蛎
をパイで挟んだフロレンタン風、ほかの人はそれぞれ鴨や牛肉。旨か
った。また行こう。帰途は同じハイヤーで十時半帰宅。伸輔は昨日沖
縄から帰ってきたばかりなので疲れたらしく、すぐ寝てしまった。
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