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偽文士日碌

五月十二日(日):657-658

 七時半起床。また室内の温泉に入り、また新さんたちの部屋で八時
に朝食。漬物が沢山出たのは有難く、茶漬を戴く。九時半出発。快晴
だ。昨日は見えなかった山脈がよく見える。石鎚山のSAで休息。こ
この喫煙所には腰掛けるところがなく、老人にはきつい。配慮された
し。昨日のルートを逆に辿るのだが、今日は瀬戸内海と工業地帯が見
渡せた。善通寺で降りて琴平へ。金丸座の電話が不通でカーナビが教
えてくれなくなり、少し迷う。金丸座は久しぶりだ。これを光子に見
せてやりたかったのである。
 通り札を買って鼠木戸から中に入る。二十人ほどの観光客が案内人
の説明を聞いていたが、それとは別行動を取り、おれの説明で全員花
道を通り、楽屋を見る。一階の衣裳部屋、床山部屋、頭取部屋などを
見て二階の座頭部屋、大部屋、女形部屋などを見る。天井の低さと階
段の狭く急なことに光子は吃驚。よくまあこんなところで芝居をとあ
きれていたが、さらに奈落へ案内してやると新さんたちも手回しの回
り舞台やスッポン、迫りあがりなどに驚嘆。ぶどう棚とかけすじが復
元されていた。
 また高速に戻る。このあたりの山は鉄兜のような形をしたものが多
い。子供の頃に見た阿波富士(高越山)がどれかわからなかったし、
この辺からは見えないのかもしれない。昔渡し船で渡った吉野川にも
巡り会えなかった。
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