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偽文士日碌

八月二十八日(水):689-690

 四時半、中央公論社・関知良が迎えに来てくれて、パレスホテルの
谷崎賞選考会へ。車中、唯一の喫煙者であるおれのために会議室を変
えてくれたと聞いて尚さら恐縮。
 今回はいずれの候補作も優れていたため、票が割れて今までになく
難航した。関さんの司会進行はなかなかよかったのだが、三作に絞り
込んでから時間がかかり、△をやめて○と×だけで再投票という池澤
夏樹の提案でやっと決着を見た。三時間かけての授賞は川上未映子の
「愛の夢とか」である。ベテラン勢とのキャリアの差もはねのけての
受賞であり、電話口で川上さんはキャーと喜んでいたとか。夫君の阿
部和重が受賞したのは三年前であり、本賞初の夫婦受賞でもある。今
ごろ夫婦抱きあって喜んでいるぞという冗談も出た。候補作の中では
いちばん文学しているというのでおれも○にした作品である。
 選考会場の一階上、五階にある中国飯店「琥珀宮」に移る。長いこ
と中華料理を食べていないのでこれは有難かった。料理も結構なもの
であったがメニューは割愛する。おれはハイボールを二杯ばかり飲ん
だが、正面の席にいる文芸局の瀧澤晶子が琥珀ビールという旨そうな
ものを飲んでいたので、最後はそれにする。いつも飲んでいるヱビス
ビールが出しているビールだった。話は大いに弾んだものの疲れから
いささか酔っていてずいぶん莫迦な、いい加減なことを言ったようで
あり、これは強く反省すべきである。帰宅十一時。明日は帰神だ。
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