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偽文士日碌

十月二十八日(月):703-704

 三時過ぎ、角川書店の郡司珠子が迎えにきて、今日は山田風太郎賞
の選考会である。東京会館に着くと赤川次郎、林真理子がすでに来て
いて、ほどなく奥泉光、京極夏彦も到着。選考が始まったがのっけか
ら票が割れ、これはどうなることかと思わされる。まず有川浩「旅猫
リポート」が最初に落ち、伊坂幸太郎「死神の浮力」も推す人なくそ
の次に落ちる。増田俊也の「七帝柔道記」は奥泉光が「みんなに反対
されるのは覚悟の上で」二重丸をつけたが、これはあとのほとんどの
委員からさんざんに貶されてしまい、落選。やはり同じ表現のくり返
しがこんなに多くては読者が疲れるだけだ。ノーマン・メイラー「裸
者と死者」も自分が戦争に行ってきたようにぐったり疲れるが、あの
作品の場合は何よりも表現力が豊かであったのだ。小生は垣根涼介の
「光秀の定理(レンマ)」を推し、中に出てくる確率の問題を説明す
るため「ニュートン」誌の別冊を出してモンティ・ホール問題を論じ
たのだが、赤川次郎、林真理子が反対し、結局は林委員の推す伊東潤
「巨鯨の海」が受賞。
 別室に移り、記者会見会場の様子をニコニコ動画で見ながらおれは
ハイボールを飲み、次つぎに持ってくる小皿の料理を食べる。やがて
林真理子が出て選考過程を話し、伊藤潤がやってきて皆に挨拶。恰幅
のいい男で、IT企業をやっていて倒産させたのだとか。彼の会見ぶ
りを見てから、また郡司さんに送られて帰宅。
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