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偽文士日碌

十一月十一日(火):821-822

の空の段ボール箱をばらして紐でくくる。
 喜美子さんは毎晩のように光子に電話してきていろいろと話してい
る。裕君が木曜日と土曜日の午後、そして日曜日にやってきて、さま
ざまな手続きをしたりあちこちへ行ったりしてくれているらしい。お
医者さんが亡くなると医師会からの脱会の書類や保険、その他病院や
お寺や公益社の支払いや死亡証明などの手続きが煩雑極まるようだ。
喜美子さんは友人が多いので次つぎに弔問客があり、気がまぎれ、退
屈もしていないようである。新さんの着ていたブレザーやコートなど
を形見分けとして次つぎに送ってきてくれたのだが、いずれもおれに
ぴったり、特にアルマーニの黒いカシミヤのコートはすぐれもの。
 伸輔に頼んでおいたシドニィ・シェルダンの「異常気象売ります」
が届いた。おれの書いた「奔馬菌」の中の高気圧発生装置というアイ
ディアがすでに書かれていたらしいので、どんな内容なのか確認する
ためである。「空の走者たち」を読了。おれの好みではないが力作。
堂堂たる大ロマンである。「異常気象売ります」を読み始めるが、こ
れは当時流行の「超訳」であり、文芸的興趣に乏しいことおびただし
い。次回ビーバップの参考資料「幻の近代アイドル史」笹山敬輔著が
送られてくる。さらに出版芸術社からは「筒井康隆コレクション」第
一巻の見返しの紙二百数十枚が送られてきたので早速署名落款を開始
する。ったくもう、風呂に入って頭を洗う時間もありゃあしないよ。
そうこうするうちに明日はもうビーバップの収録だ。あわてて「幻の
近代アイドル史」を読む。
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