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偽文士日碌

十二月五日(金):835-836

一はアメリカにいて出席できず、ビデオでの挨拶だった。
 パーティでは主に鴨下信一と昔のことや久世光彦はじめ亡くなった
誰それのことなどを話す。この話題、このパーティに来ている人の何
人がわかるだろうかと鴨下さんが言うので、鴨下さん、それはわれわ
れ二人だけですよなどとも言う。お互い、あなたは死なないでくださ
いと同じことを言う。彼はおれより一歳下だ。
 阿川佐和子の席へ祝いを述べに行ったのだが、あとで考えるにどう
やら彼女、おれがわからなかったようであった。「わたし、話してい
る相手の名が思い出せない時があるんですよ」などと言うので、変な
ことを言うなあと思っていたのだが、あとで考えるに、実は困ってい
たらしい。こちらはいつも彼女をテレビで見ているので熟知している
ように思っていたのだが、彼女がわが家へインタヴューに来たのはも
う何年も前、その時はまだ髭もなく、眼鏡もかけていなかったのだ。
最後に「あなたは原宿のわが家をご存知なんだから、また寄ってくだ
さい」と言ったのでやっとわかったようだった。
 向田邦子の妹さんとも話す。新橋演舞場での「冬の運動会」に出演
した時に逢って以来である。藤沢周平の娘さんが挨拶に来る。その他
文藝春秋の編集者多数に逢う。廊下では大宅映子とも逢って話す。い
ちいち喫煙ルームへ行くのが面倒なので我慢していたのだが、パーテ
ィ会場内に喫えるスペースがあったことを帰り際になって知る。ずっ
とサポートしてくれた田中さんに見送られて八時過ぎにタクシーで帰
宅。年末とあって道路は混雑していた。帰着九時。
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