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偽文士日碌

一月二十九日(木):847-848

 咳が治まらない。熱はないのだが、夜になると咳が出て眠れず、痰
にも苦しむ。医者に行っている時間もない。それでもふらふらしなが
ら一昨日上京したのだが、どうもはかばかしくない。
 山口昌男の遺稿だった「エノケンと菊谷栄 昭和精神史の匿れた水
脈」が送られてきたので読む。高清子の名前も一か所だけ出てきて、
「夏のデカメロン」の出演者の写真の左端にも彼女を発見。
「たんときれいに召し上がれ」という美食文学のアンソロジイに、わ
が「薬菜飯店」が収録された記念のパーティを今夜やってくれるのだ
が、そのため四十冊ばかり署名落款しなければならない。イスラム国
人質事件のニュースを見ながら揮毫捺印。「ゴトーを待ちながら」ト
ルコ国境のアクチャカレに集る取材陣。子供や犬までいる。
 六時半に芸術新聞社の古川史郎が迎えに来て、すでに来ていた郡司
珠子と共に新宿のロシア料理「スンガリー」へ。編者の津原泰水と対
面、ほどなく金子國義も来る。地下の店内には四、五十人。知った顔
もちらほら。大部屋と別室に別れていてややこしいが、両方にまたが
った場所でトークをやらされる。料理はサーモンマリネのプリヌイク
レープ包み、マッシュルームのつぼ焼き、ボルシチ、ピロシキ、ウク
ライナ風ロールキャベツの煮込み、ロシアンティー。やたらに写真を
撮られる。酒は光子に禁じられていたのだが、最後にウォッカをきゅ
っと一杯。また郡司さんに送られて帰宅十時。
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