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偽文士日碌

四月二十九日(水):869-870

 次つぎと知人、同業者が亡くなっていく。船戸与一が七十一歳の若
さで癌に倒れ、劇団昴でわが「スタア」の犬神博士をやってくれた西
本裕行が亡くなり、新潮社のわが担当で出版部長の中瀬ゆかりのお連
れ合いの作家で白川道がこれも若くして亡くなった。なんだかいたた
まれぬ気持だが、おれ自身は八十歳でまだ元気。これは他の人にはち
ょっと理解されない悲哀であり、気分なのだろうなあ。前にも書いた
かも知れないがこの日碌、だんだん過去帳みたいになってきた。いや
だいやだ。そんなこんなで、実は四月二十四日は結婚記念日であり、
金婚式でもあったのだが、パーティなど派手なことは自粛し、夫婦だ
けで祝った。
 今日はビーバップの収録。出演者全員が多忙になり、開始時間が三
十分繰り上がって前回からは十二時十五分に早くも迎えの車が来る。
四百八十二回めとなる「保険詐欺事件」の最後に、新刊の「世界はゴ
冗談」の宣伝をやらせていただく。「お笑いの人は是非読んでくださ
い。お笑いが好きな人も是非読んでください。そしてこの本には、悪
いことがいっぱい書かれています。わたし自身が善良な人間ではない
から」と言うと、皆がいやいや、そんなことはないと言うので、「善
良な人間の書いた小説など面白くもなんともない」と言っておく。
 帰る時間も早まり、帰宅は七時半。テレビで安倍総理のアメリカ議
会での演説を聞いたので、就寝は一時半。
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