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偽文士日碌

五月十六日(土):873-874

 長篇に取りかかったものの、あまりに話が大きすぎて収拾がつかな
くなることが明らかになってきた。収拾がつかなくてもいいではない
かと思い、書き始めている。
 骨休めに夫婦で久しぶりに有馬温泉の「花結び」へ出かける。土曜
日だというのに、よく部屋がとれたもんだ。三時半にタクシーで出発
し、四時過ぎには着いてしまった。新しい道路ができてさらに早く行
けるようになったのだ。天気はよく、新緑があざやかだ。駅前の町は
中国人らしい観光客であふれている。顔見知りの人が何人も出迎えて
くれる。おれたちの泊る六階では馴染の仲居さんとも逢い、「お久し
ぶり」と挨拶を交わす。いつも泊る部屋であり、いつもの仲居さんで
あり、ずいぶん落ち着く。さっそく部屋の露天風呂に入る。太腿や腰
の皮膚アレルギーを治さなければならないので、長いめに入る。風呂
にテレビがついているので、いつまででも入っていられる。六時に夕
食。光子は初めて神戸ワインを飲み、おいしいと驚いていた。おれは
大魔王を貰う。食前酒はパインの酒。料理は献立には出ていない毛蟹
が特別に出てきた。鱧の湯引き、鯛や中トロや縞海老などの刺身、金
目鯛のしゃぶしゃぶ、伊勢海老のおろし煮、鯛の白子、平目の寿司な
ど。最後の但馬牛のステーキが絶品で全部平らげてしまう。テレビは
どれもこれも集団的自衛権と、明日が投票日の大阪都構想についての
討論番組。また風呂に入って就寝。なかなか寝つかれず、困る。
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