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偽文士日碌

三月十一日(金):941-942

 昨日は掛川豊弘税理士が来て、例年の如く納税金額の説明をしてく
れた。「旅のラゴス」のバカ売れその他で昨年よりも収入が増えたた
め、税金も高額となる。光子は貯金がなくなったと言っていささか不
満げだが、考えようによってはこの歳でこれだけ納税できるというの
は嬉しくもあり有難いことでもある。
 雑用の多忙さはあいかわらず。復刊ドットコムから出る戯曲集の見
返しの用紙に署名落款をし、その他あちこちのアンソロジイに収録さ
れる昔の作品の校正をする。差別的な語や文章が多いが、すべてその
ままで収録すると編集者たちが言ってくれるのは有難いことである。
断筆した作家なればこその優遇であろうか。
 今日は新聞も、一日中テレビも、震災、震災で満艦飾。もうあれか
ら五年経つのか。五年前の三月十一日のこの日録を読み返す。この時
にはまだ福島の原発事故のことはまったく知らない。そのあとの記述
にも原発のことは書いていない。ショックが大きすぎて書けなかった
のかもしれない。
 平凡社から箕輪邦雄の木版画で書かれた九十人の短文を「珈琲のこ
とば」として一冊にまとめた本が送られてきた。おれの文章がボブ・
ディランと並んでいるのは嬉しい。珈琲専門店などが競って置いてく
れるようだといいな。夜はご贔屓のジェイソン・ステイサムが出てい
る「ワイルド・スピード」をBSで見て就寝。
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