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偽文士日碌

五月二十五日(水):953-954

 御嶽海、敢闘賞。ほらな。おれが言った人はみな出世する。なんと
十一勝四敗。来場所は前頭筆頭か小結だ。上位との取組が楽しみでな
らんわ。ロシア陸連のドーピング騒ぎ。おれも昔、リタリンを服んで
原稿を書いたものだが、あれはドーピングではなかったか。
 あいかわらずの署名落款とゲラ直しが続く。新たな小説など、描く
暇などない。そこへもってきて蓮實重彦の「伯爵夫人」を「波」で書
評しろと、編集長になったばかりの楠瀬啓之が言ってきた。めでたい
ことなのでお祝儀原稿として書かねばなるまい。送られてきた「伯爵
夫人」を読み始める。タイトルと、主人公が旧制高等学校の学生であ
ることから「赤と黒」を連想したのだがそうではなかった。これはま
ったく、とんでもない話である。
 今日はビーバップ行き。一回目が不動産の話で、二回目が隠語、業
界用語の話。一回目では、危うく問題ありの物件を買わされそうにな
った話をするとみんな驚いていた。二回目の先生はその種の辞典を二
冊も出している教授だが、おれの「現代語裏辞典」を愛読したとのこ
とで、署名落款を頼まれてしまった。
 間の時間で「伯爵夫人」を読み進める。収録後、アテンドしてくれ
ている服部八寿子からたむけんが納品している「たむら」という焼き
肉弁当を貰う。二日に対談する佐々木敦からまだレジュメが届かぬ。
何を訊ねられるのかわからないというのは実に不安なものである。
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