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偽文士日碌

七月八日(金):967-968

 あれからまだずっと東京にいる。こちらの方が涼しいからだ。二十
九日の水曜日には「所さんのニッポンの出番」の収録があり、これは
二時間の回だったのでしんどかった。中丸雄一君とは初対面。
 アンドリュー・ドライバーからメール。新たに英訳の短篇集を出し
たいとのことである。「ペニスに命中」その他十六篇のタイトルをあ
げてきたが、他にも「富豪刑事」から「囮」だけを入れたいと言う。
「富豪刑事」というシリーズの一篇であることを明記するならば許す
と言っておく。
「芸術新潮」からダリについてインタヴューしたいと言ってきたが、
ダリはもう卒業したと言ってお断りする。講談社からは「二十一世紀
の暫定名著」を三冊選べと言ってきたが「名著」という概念はおれの
中にはないのでお断りする。小説は面白いか面白くないかのどちらか
である。三島賞のパーティで久しぶりにちょっと話した河出書房新社
の吉田久恭から改めて講演のカセットブック「誰にもわかるハイデガ
ー」を本にしたいというメール。原稿に起すことは了承したものの、
はて、一冊になるほどの分量があるのかどうか。
 青空書房の坂本健一が九十三歳で死去。前の日に電話で話したばか
りだった。介護の人が朝、ベッド上で眠るように亡くなっているのを
発見したと言う。やれ羨ましや。だが、なんてことだ。初めて逢った
時からもう七十年近くも経っていたのだ。
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