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偽文士日碌

八月二十二日(月):977-978

 どこかへ出かけるという時に限って台風が来る。谷崎賞の選考があ
るというのに困ったことである。四時二十分に中央公論の法輪君が迎
えに来て、ハイヤーの中で、今夜の選考会のある読売本社内が全面禁
煙と聞いて驚き、あわてて喫煙可の車内で一本喫う。雨脚は激しくな
いもののお堀端の水が凄かった。選考会場へ着くともう全員揃ってい
る。開口一番「よいお湿りでございます」とやってウケた。
 選考は今までになく議論が何度も頓挫して時間がかかり、そのお陰
で一度、喫煙ルームへ行くことができた。議論の落ち着きどころを皆
で考えた結果、久しぶりの二作受賞となり、絲山秋子「薄情」と長嶋
有「三の隣は五号室」。絲山さんはおれに個人文学賞をくれたし、長
嶋君とはパスカル文学賞以来の縁がある。
 上階に移動。普段は社員食堂だという広く見晴らしのよいスペース
に今夜は銀座スエヒロが入っていて、フランス料理。シャンパンで乾
杯のあとおれはハイボール。他の皆さんはワイン。絲山さんにはすぐ
に連絡がとれたらしく、喜んでいたという報告が入ったものの、長嶋
君の方は九州でトークとサイン会というイベントのさなかだからなか
なか連絡がとれず、まあ断られることはないだろうというので食事が
進む。料理はなかなかの美味・珍味であり、特に海鮮料理が旨く、例
年の如く座談は笑いに満ちて面白い。この階の喫煙ルームへも一度だ
け行く。同じハイヤーで九時過ぎに帰宅。いつもより疲れた。
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