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偽文士日碌

十月四日(火):987-988

 四時半に丹羽健介がベンツで迎えに来てくれた。車内には灰皿。東
大到着前に一服やる。キャンパス内は禁煙なのである。
 福武ホールの前に都甲幸治、平野啓一郎他の人たちが待ってくれて
いて、控室に入り、打合せ。東大の教授連が次つぎに挨拶にやってく
る。六時、ホールへ出る。インタヴュー開始。都甲さんの質問はやや
こしく、レジュメ通りの順ではないので、答えるのにずいぶん苦労し
た。七時にいったん休憩し、控室で質問の用紙を見て三枚選び、すぐ
ホールに戻って再開。都甲さんが質問を読み上げ、おれが答えるとい
う形で進行する。途中、どうしても喫いたくなり、全面禁煙の館内の
舞台上で「私煙草喫わないと死にますので」などと言いながら一本出
して火をつけたら、皆、大笑い。さすがに「やめろ」と言う人は誰も
いなかった。ほんの三服か四服喫っただけで携帯灰皿に入れる。ここ
で煙草を喫ったのは後にも先にもおれひとりだ。
 終演後、柴田元幸が奥さん同行で来ていたことを教えられ、挨拶し
たかったのにと悔やむ。赤門からすぐ近くのイタリア料理店へまたベ
ンツで移動。店ではハイボールを頼む。わが会議室の面面や、須田美
音もやってくる。学生たちも含めて三十人余りで乾杯。おれの希望で
ひとりずつ自己紹介してもらったが、これは面白かった。また丹羽君
にベンツで送ってもらい、十時前帰宅。
 この日のインタヴューは「文學界」の新年号に掲載される。
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