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偽文士日碌

十一月二日(水):995-996

 阪神高速が大工事で途中通行止のため、呼んだリムジンに乗って西
宮から名神で大阪へ行く。実は高清子の姪だと言う女性から文藝春秋
の田中光子に電話があり、新潮社の楠瀬啓之にセッティングしてもら
って、大阪のニューオータニで逢うことになったのだ。光子はこの機
会に千日前の筒井家墓地に参りたいというのでリムジンに同乗、まず
お墓へ行って簡単に墓前で手を合わせ光明真言を五輪塔と先祖代々の
墓に三回ずつ六回唱えてから、掃除などあとのことは光子に任せ、ニ
ューオータニへ。やはり来たばかりの楠瀬啓之とロビーで会う。
 ほどなく女性があらわれる。高清子の兄の娘だという高見千鶴子さ
ん七十六歳である。小肥りながら顔立ちは高清子に似ていた。予約し
ていた部屋に案内し、いろいろとお話を伺う。千鶴子さんは不動産会
社にお勤めで、休みは水曜日だけとのこと。ご主人は亡くなられ、東
京で俳優業をしている息子さんが「繁栄の昭和」を発見し、千鶴子さ
んに連絡してきたのだそうだ。千鶴子さんは「書いて戴かなければ高
清子なんて誰も知らなかったのに」と大変喜んでおられ、三冊もご購
入になったという。むろん高清子とは親交があり、以前に書いた「高
清子とその時代」のいくつかの間違いを知る。戒名やお墓の場所も教
えてもらった。二時間ほどののち千鶴子さんを送ってから楠瀬君と一
階のバーで一杯ひっかけながら少し話し、別れる。楠瀬君はさっそく
お墓に参ってくれるらしい。七時帰宅。
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