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偽文士日碌

二月二十日(月):1021-1022

 午後四時、松浦寿輝と、「新潮」の編集長・矢野優と、松浦寿輝を
担当している副編集長の松村正樹がカメラマンを伴って来宅。今日は
「新潮」五月号掲載のための対談である。あとで夕食に行く予定なの
だが、楠瀬啓之が来ていないので理由を訊ねると「波」の校了だとの
こと。夕食には来てくれるよう矢野氏に頼んで、対談開始。今日は松
浦氏、なんとなく元気がなくおとなしいので、なんだかおれひとりが
喋ったような気がする。それでも五時四十分頃にはなんとか終えるこ
とができた。松浦さんは昨日矢野氏を介してのメールで「筒井康隆を
圧縮する」というタイトルのリストを寄越し、それはおれの短篇五十
篇を分類して「空間をぶち壊す」「身体をぶち壊す」「意識をぶち壊
す」「言語をぶち壊す」「世界をぶち壊す」の五項目にわけてそれぞ
れ十篇ずつを選んでくれていたので、これも対談の頁に収めるよう矢
野君に頼んでおく。こんなものまで読んでいたのかと吃驚仰天させら
れたリストだ。対談では、おれがロバート・A・ハインラインの傑作
短篇「大当りの年」を話題にしたら、それを現代にからめた小説を書
けと松浦氏にそそのかされたものの、パクリになるし、おれにはそこ
まで調べて書く能力がないと言ったことを記憶している。
 六時を過ぎ、皆でリストランテ・フィオーレへ小雨の中を移動。お
れはいつものウイスキー、松浦さんには彼が好きだというジン・トニ
ックを薦める。彼の短篇の中の主人公がこんなに旨い酒はないと漏ら
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