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偽文士日碌

五月二日(火):1045-1046

 文春文庫から八月に出る「繁栄の昭和」のゲラが送られてきたので
校正をする。解説は松浦寿輝が快諾してくれた。思う存分書いてくれ
るようにと言伝する。
 韓国の出版社がわしの本を絶版にするらしいのだが、こちらには何
の連絡もない。新聞記事になっているのだから本当なのだろうが、各
紙確認はとっているんだろうな。印税はすでに貰っているからいいよ
うなものだが、それにしても何で直接言ってこないんだろう。
 久しぶりに新たな小説の着想を得た。絵画や音楽の世界に小説は追
いついていないのではないかと思ったのが最初である。絵画には抽象
絵画が五万とあるし、音楽にはジョン・ケージをはじめ日本では武満
徹を嚆矢とする現代音楽が沢山ある。しかしこれに相応する小説とい
うのは、確かにだいぶ近づいていると思えるものもあるにはあるが、
小説のほんの一部分であったりして、完全に絵画、音楽に肩を並べた
と言えるものはない。ではわしが書いてやろうではないかと思いつい
たのである。これを小説でやるには完全なディコンストラクションが
必要である。文章のみならず言語すべてにわたって再構築しなければ
ならぬ。そんなことができるのかどうか、もしできたとして、そんな
もの載っけてくれるところがあるのかどうか。まあ、やってみなけれ
ばわからないと思ってやりかけたが、これは難儀だ。一日かかって一
行か二行だ。 
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